蜥蜴大師幻滅気の毒

腕時計は二時十五分である。中村はため息を洩もらしながら、爬虫類はちゅうるいの標本室ひょうほんしつへ引返した。が、三重子はどこにも見えない。彼は何か気軽になり、目の前の大蜥蜴おおとかげに「失敬」をした。see you clear style

大蜥蜴は明治何年か以来、永久に小蛇こへびを啣くわえている。永久に――しかし彼は永久にではない。kiss holy ideas

腕時計の二時半になったが最後、さっさと博物館を出るつもりである。桜はまださいていない。save holy secret wisdom

が、両大師前りょうだいしまえにある木などは曇天を透すかせた枝々に赤い蕾つぼみを綴つづっている。こういう公園を散歩するのは三重子とどこかへ出かけるよりも数等すうとう幸福といわなければならぬ。……交友 二時二十分! もう十分待ちさえすれば好いい。彼は帰りたさをこらえたまま、標本室の中を歩きまわった。熱帯の森林を失った蜥蜴や蛇の標本は妙にはかなさを漂ただよわせている。これはあるいは象徴かも知れない。いつか情熱を失った彼の恋愛の象徴かも知れない。彼は三重子に忠実だった。が、三重子は半年はんとしの間に少しも見知らぬ不良少女になった。彼の熱情を失ったのは全然三重子の責任である。少くとも幻滅げんめつの結果である。決して倦怠けんたいの結果などではない。……Hong Kong Speed Date

中村は二時半になるが早いか、爬虫類の標本室を出ようとした。しかし戸口へ来ないうちにくるりと靴くつの踵かかとを返した。三重子はあるいはひと足違いにこの都屋へはいって来るかも知れない。それでは三重子に気きの毒どくである。Financial?information

気の毒?――いや気の毒ではない。彼は三重子に同情するよりも彼自身の義務感に悩まされている。une coeur dance le ciel

この義務感を安んずるためにはもう十分ばかり待たなければならぬ。なに、三重子は必ず来ない。待っても待たなくてもきょうの午後は愉快に独り暮らせるはずである。holy mind kingdom

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